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★★★★★ 作者: 田中芳樹 出版社: 徳間書店 シリーズもの ・１ 黎明篇／ ・２ 野望篇／ ・３ 雌伏篇／ ・４ 策謀篇／ ・５ 風雲篇／ ・６ 飛翔篇／ ・７ 怒濤篇／ ・８ 乱離篇／ ・９ 回天篇／ ・１０ 落日篇／ ・外伝 星を砕く者／ ・外伝 ユリアンのイゼルローン日記／ ・外伝 千億の星、千億の光／ ・外伝 螺旋迷宮 銀河系を舞台に、銀河帝国と自由惑星同盟、フェザーンが三つ巴の戦いを繰り広げる物語。 ページをひらくとまず、人類が宇宙へ飛び出し、銀河系に拡大していった様子が淡々と語られていきます。歴史小説ふうの文章が嫌いな人はこの時点でもう本を閉じるかも知れない。そうして、延々と歴史が語られていき、宇宙暦７７６年／帝国暦４６７年に到達し、初めて主役たちが登場。 それから物語は２人の主人公、ラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーを中心に展開していきます。 ラインハルト・フォン・ローエングラムは、銀河帝国の軍人。小さい頃、姉が皇帝の後宮に召されてしまいます。その時、姉を奪った皇帝、ひいては門閥貴族の支配する帝国への憎しみを抱くようになりました。彼は戦争の天才であり、しかも政治家としても優秀でした。彼は、宇宙を統一すべく羽ばたいていきます・・・ その前に立ちふさがるのがヤン・ウェンリー。ヤンは自由惑星同盟の軍人です。「不敗の魔術師」とあだ名されるほどの戦争の天才。彼は、民主主義の抱える矛盾に悩みつつ、それでも民主主義を信じて戦います。 独裁主義と、民主主義、どちらが良いのか、というのがこの『銀河英雄伝説シリーズ』の大きなテーマの１つです。ラインハルトはあらゆる腐敗を踏み潰し、新たに清新な帝国を築き上げていきます。そして、「腐った民主主義よりも、清い独裁主義の方が良いだろう」と問いかけます。けど待てよ、とそこで踏みとどまるのがヤン・ウェンリー。彼は迷いつつも、独裁主義への懐疑を抱き続け、闘い続けます。 とここまで読んでみて、重々しくて難しい物語を想像する人もいるかも知れないけど、そういうことはありません。『銀河英雄伝説』はエンターテイメント。キャラたちが前面に出ているところはとてもライトノベル的だし、軽妙な皮肉のきいた会話は楽しいです。たとえば、ヤン・ウェンリーは格好良い「民主主義の戦士」ではありません。彼は「ごくつぶしのヤン」「無駄飯食いのヤン」と言われる怠け者です。その上、ひねくれ者・・・ そういうところが面白いのです。 読んでいて印象的なのは、物語の中ではどんな凄い人でも（ヤンでも）、歴史を大きくは動かせないということ。ただ１人、ラインハルトだけは歴史を大きく前進させますが、それでも大切な親友を失い、ヤンには勝てず、思い通りにはいきません。天才によって簡単に世界が救われたり、変化する物語はよくあります。けど、そういうものよりも、『銀河英雄伝説』の方が面白いなぁと僕は思います。 |