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★★ 著者: 井上ひさし 出版社: 新潮社 貧乏作家フン先生が書いた小説の中から、四次元の大泥棒ブンが飛び出してきます。ブンは全ての物を盗むことができて誰にも捕まえることが出来ない存在でした。彼は、ナンセンスな悪戯を繰り返します。自由の女神の手に巨大なソフトクリームを握らせたり、アンパンのヘソをカエルに移植したりしたのです。警察は、必死でブンを逮捕しようとしますが・・・ 楽しい三文小説。 それまで脚本や戯曲を書いていた井上ひさしが、初めて発表した小説が『ブンとフン』だそうです。言葉遊び／ギャグが満載。荒唐無稽でばかばかしいですのですが、エロとグロはとくになくて、とにかくおかしいです。 基本的に文体もストーリーも軽薄で軽快なのですが、人は権威を持つと目が曇るというような指摘が挟まれていて面白いです。ジョークとギャグの中に、真面目なテーマのようなものがしっかりとにじみ出ています。けど、それらも少し顔を覗かせるだけで笑いの中に呑み込まれていきます。 笑いというのは、真面目なもの、たとえば権威とか権力を無効化するとき、とても役に立つものなのかも知れない、と感じました。うまく使えれば心強い武器になるだろうけれど、笑いで全てが済まされたら怖いなぁ・・・ 『ブンとフン』は、ライトノベルの祖先のようなものかもしれない、とも感じます。暇潰しに読むにはもってこい。ただし、少し古めかしいのですが。 |