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★★★★ 著者: 森見登美彦 出版社: 新潮社 「自主休学」している京都大学農学部の５回生「私」の物語。私には三回生の時、水尾さんという恋人がいましたが、ふられてしまいました。今では水尾さんへの恋情はすでに断ち切っている、と「私」は思い込んでおり、「なぜ自分が水尾さんに惚れたのか」ということを冷静に見つめよう、と２００枚以上になる大レポートを書いています。私は水尾さんに避けられ、「研究停止」の宣告を受けながらも水尾さんの観察・研究を続けていました。そんなある日、水尾さんを追いかけるあやしい男に出会います。その男は遠藤といって・・・ 妄想に満ちた青春小説。 文体が素晴らしいです。主人公である私は劣等感を抱きつつ理屈ばかりこねます。だから、軽妙で大仰で、言い訳ばかりが満ち溢れているのだけど、だからこそ、物凄くおかしいです。普通の小説とは異なるリズムが生み出されています。 京都と言う地を舞台にしているところが良いのかも知れません。独特の空気が生まれています。そして、そこに可憐な女の子と過ごしたいと思いつつもそれを実現できない腐れ大学生というものが付け加えられると奇怪で滑稽な雰囲気が醸成されます。マジックリアリズム的と評されているそうですが、そういう言葉で説明せずとも本当に素晴らしい。 主人公はストーカーのようなものですが、断固として彼は自分がストーカーだとは認めません。その辺りが、とくにおかしいです。そして、ラストが良いです。ちょっと甘すぎるけど、まぁ希望が見えかけたような気がするところは良いのではないか。 日本ファンタジーノベル大賞受賞作。森見登美彦のデビュー作。 |