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★★★ 著者: 魚住直子 出版社: 講談社 魚住直子の短編集。『卒業』『首なしリカちゃん』『ピンクの神様』『みどりの部屋』『囚われ人』『魔法の時間』『ベランダからキス』収録。 『ピンクの神様』 女性消防士になった後藤寿々は、職場の人たちとはすれ違いを繰り返します。そして高校時代の旧友に会おうと思うのですが、なかなか時間が取れません。どうすればいいのか悩むのですが・・・ これまで魚住直子は思春期の子どもを扱った児童文学を書いてきました。ですが、今回は女性を主人公にした短編が７つ。たいてい世間的なものに左右され、『現実』に振り回され、生きることに疲れた人たちの物語です。だけどどこかに少しだけ救いはあるかも知れない、と思えるようなラストがくっついています。 奇跡や偶然に頼らないところはみごとだとは思うし、日常の中に潜む倦怠感を掬い上げる腕前も凄いと感じます。重松清と似ているけれど、重松清ほど綺麗なおはなしにはならないところも悪くないとは思います。 しかし、読んでいると憂鬱な気分になってきます・・・ 最後まで読みきれば全体としては爽やかな印象を覚えます。しかし、些細なことで沈み、些細なことで気を取り戻すその反復の中に主人公がいることは変わらないわけです。結局のところ、少しだけ元気になった、というそのラストはまやかしに過ぎないのではないか、と感じてしまうのです。 |