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★★★ 著者: 筒井康隆 出版社: 角川書店 ある日、理科室を掃除していた中学３年生の芳山和子はラベンダーの香りを嗅ぎ、意識を失います。それから、様々な事件に遭遇するのですが、彼女は時間を遡行することによってそれらの事態を回避できることに気付きます。悩んだ末、理科の教員・福島先生に相談すると、それは「テレポーテーションとタイム・リープではないか」と教えられ、真相を確かめるべく何日か前の過去へ向かうのですが・・・ ＳＦ的設定を取り入れたジュブナイル小説。 なかなかに面白いです。しかし、少し古風だし、サクッとしていて物足りません。骨格だけが純粋にきちりと示されているような感じなのです。前衛的とも評される筒井康隆なのに、子供向けということで力を抜いたのかなぁ。 だけど、そういうふうに想像の余地をたくさん残したことでかえって多くの人の記憶に残るものになり、何度も映像化されているのかも知れない、とも感じます。 もしかしたら、タイムリープという言葉を持ち出し、普通の女の子が過去へ戻ってしまうことをなんとなく説明したところが素晴らしいのかも知れません。『時をかける少女』は、１９６７年に刊行されたわけだけど、この後ジュブナイルやライトノベルは山のように量産され、タイムスリップを扱った作品も溢れていくわけです。それらは全て『時をかける少女』の子孫ということもできるか。 非常に凝った（というかひねくれた？）小説ばかり書いている筒井康隆の小説を読み始めるきっかけとしては良いかも知れない、と思いました。 |