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★★★★★ 著者: 夏目漱石 出版社: 新潮社 先生と私の物語。「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の三章から構成されています。私は、田舎から都会へ出てきた学生です。あるとき、先生という人物に出会います。先生は仕事に就かず、妻とともにひっそりと暮らしている人でした。私は先生に惹かれていきます。しかし、先生は尊敬されることを拒み、不思議な言葉を振りまきます。私は、先生の正体をなかなか掴むことができません。いったい先生が隠しているものは何なのか・・・ 小説。 文体は平易です。物語の構造自体も、明快です。読んでいて、迷うことはありません。しかし、読み解くのは、簡単ではありません。ある意味ではミステリのようでもあります。謎が溢れています。 先生と私の関係は面白いです。読んでいて、師匠の側が、何らかの実用的な知識を伝えることがなくても、師匠は師匠になりえるのではないかと感じました。もしかしたら、師弟関係に必要なのは、師匠と弟子とその間を取り結ぶ信頼なのではないかと推測してしまいましたあたっているかどうかわからないけれど・・・。 『こゝろ』という言葉に関しても、様々な推測が成り立ちます。日本文学鑑賞の時間にも取り上げられたので、考えていましたが、難しい、と感じました。 柄谷行人は、あらゆる恋愛関係は三角関係なのであって、そのことが『こゝろ』には描かれていると指摘しているそうです。たとえば、『こゝろ』は、愛が扱われていますが。尊敬する人を真似することによって、私は誰かを愛するということを知るのであって、自然に人を愛するようになるわけではなく、どうあっても私は遅れざるを得ない、というのです。私は誰かを介して愛するということを知る、という説明は、分かる気もします。 とりあえず、読んでみると面白いです。 |