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★★★ 著者: 磯崎憲一郎 出版社: 河出書房新社 「日本に帰るまえに、どうにかしてアメリカの女と寝ておかなければならない。当時の私はそんなことを考えていた。そんなときに出会ってしまったのがトーリだった。」という一文から物語は、唐突に始まります。主人公は仕事のためアメリカに赴きます。そして、トーリという女性に出会い、結婚します。結婚を決意したのは、トーリの「黒い腋毛」をみた時。 時間をテーマにした小説、なのか。 人間が生きていく時、多くの意味は勝手に作り出されていきます。そして、人生自体にも、意味が与えられます。不思議ですが。しかし、生きることに意味がある、とは思えないと著者は考えている気がします。 時間が、意味をつくるのかも知れません。 時間というものは、よく分かりません。多くの人間は、時間という言葉を普通に使っています。そして、時間という概念を普通に受け入れています。しかし、時間はあるものなのか、と考えてみるとよく分からなくなります。 主人公はヘンな人。だから、現実がヘンなものに見えます。もしかしたら、物語の舞台になっているアメリカという場所が、日本から見た場合、奇妙なのかも知れません。外国は異界です。アメリカの風景が描かれている場面は、妙に興味深いです。日本人の主人公は異邦人ということになる、のではないか。 カフカが微妙に登場しますが、磯崎憲一郎の小説は、カフカの小説の影響を受けているような気がします。なんというか、現実を切り取る手付きが変です。即物的といえばいいのか。登場する人間たちも、妙に、カサカサしていて、人形のようです。 |