『ホテルジューシー』　佐々木司著

Togaidai Shimbun　by キノ

　凝り固まった頭をほぐし、肩の力を抜いてくれる青春ミステリーだ。

　主人公のヒロちゃんは大家族の長女で、責任感の強いしっかり者。大学二年の夏休みは沖縄のリゾート地で充実したバイト生活を送るはずが、働き者なのが災いし、人手不足のゲストハウス、ホテルジューシーへ送られてしまう。そこで働いているのは、夜は頼りになるが昼はダメ人間のオーナー代理や、超テーゲー（沖縄の方言でアバウト）な双子のおばあちゃんハウスキーパーなど、どこかズレた人達。彼らや一筋縄ではいかない宿泊客に振り回され、奮闘するヒロちゃんだったが……。

　「自分ができることはやるべきだ。危なっかしい手元は支えるべきだ。」そんなヒロちゃんの主張は確かに正しい。だが、世の中は正論だけでは立ち行かない。他人から見てどんなにみじめで格好悪くても、その生き方しか選べない人たちもいる。良く言えば真面目、悪く言えば融通の利かない彼女は、そうした人々との接し方に悩みながら、少しずつ成長してゆく。毛嫌いしていた「だらしない」人種を代表するような、従業員仲間たちの手によって。

　キーパーソンで、主人公を見守り、時に厳しく諭してくれるオーナー代理については、もっと突っ込んだ人物描写が欲しいところだ。だが、ヒロちゃんと客との関わりは丁寧に描かれており、「人と関わる仕事っていいな」と思わされる。

決して綺麗事ばかりの話ではないのに、爽やかな読後感が残った。この夏が終わる前に一読してみては？

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