『ねじの回転』　ヘンリー・ジェイムズ著

Togaidai Shimbun　by キノ

　　最後の一行を読み終えても、ついに真相がつかめなかった。

　

　主人公はエセックスの邸宅で働き始めた、住み込みの家庭教師。親を亡くした兄妹、マイルズとフローラの教育を請け負い、すぐにその天使のような愛らしさに魅了される。だが、かつてこの屋敷で働いていた男女の幽霊を目撃したことで、楽しい日常は一変してしまう。幽霊の狙いはマイルズとフローラだと確信した彼女は、雇い主の紳士を慕っていたこともあり、家政婦のミセス・グロウスと協力して二人を守ろうとするが、次第に子供たちの純真さに疑いを抱き始める。

　以上のあらすじの通り、素直に読めば、この物語は恐ろしい幽霊と謎めいた子供たちを巡るホラーだ。しかしこの見方には疑問が残る。語り手である主人公は誠実だが、論理的とは言い難いからだ。子供たちを救おうと必死になっているが、実際には幽霊が兄妹を狙っているというのも、二人が幽霊を見ているはずだというのも直観にすぎない。その台詞の端々から彼女の思い込みの強さがうかがえる。果たしてこの幽霊は本当にマイルズとフローラを害していたのか？そもそも幽霊など存在しなかったのでは？数々の謎を残したまま、物語は幕切れとなる。あまりにも皮肉で残酷な結末の余韻を残して。

　その多義性から長年多くの文学者を悩ませてきた、19世紀末の問題作。秋の夜長にじっくりと巨匠の謎に挑むのもいい。

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