『三匹のおっさん』　有川　浩著

Togaidai Shimbun　by キノ

　敬老の日なのでこの本を紹介します…などと言えば、タイトルの三人組に怒られてしまいそうだ。

　定年を迎え、嫌々ながらゲームセンターに再就職した男性・キヨ。父から受け継いだ剣道の道場も生徒不足で閉めてしまい、時代の流れや自分が隠居扱いされることに割り切れないものを感じている。まだまだ「ジジイ」じゃなく「おっさん」だ！そう意気込み、悪友と共に私設自警集団「三匹のおっさん」を結成する。集うのは柔道家・シゲと工場長で機械いじりの得意なブレーン・ノリ。キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の高校生二人も巻き込んで、町内の悪意を暴き出す！

　三匹が速やかに、しかしさりげなく事件を防ぐ様は実に格好よく、ちょっと現実離れしているくらい。だが彼らのパーソナリティーや家族との関係は細やかに描かれており、「もしかしたらこんな人たちいるかも？」と思わせてくれる。そこがミソだ。

　しばしば覗く、社会のひずみやその中で暮らす人々の歪みに向けられた洞察はドキリとするほど鋭い。それでいて、ノリの行き過ぎた親馬鹿っぷりなど、笑わせるところではきっちり笑わせる。このバランス感覚の良さが、幅広い読者層から支持される所以だろう。

　御託を並べたが、まずは何も考えずに読んでほしい。面白さは、本書を紹介した俳優の、故・児玉清さんも保証済みだ。

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