レイが寝転がったまま言った。
「・・よく分からないわね。つまりあなたが黄金の戦士になったんじゃないの？」
「う〜ん、いや炎に包まれて倒れたあと、全く何も覚えてない」
ろうそくの光がレイの顔半分だけを照らして不気味だった。そこへレイナがやってきて言った
「・・とりついたとか？」
「何が・・・」
リュウは顔をしかめた。自分に何かがとりつくなんて想像しただけで気持ち悪い。だが暗闇がちょうど良くその表情を隠した。
「まぁどうでもいい」
リュウは呟いた。
「あぁそれにしても眠い・・・。私寝るわ、おやすみ」
レイが体の向きを変えてあちらを向いた。
「私も」
レイナが呟くと、洞窟の奥のほうに行ってしまった。

リュウは一人洞窟の外に出た。寝ようにも寝られない。
もう洞窟の中は人でいっぱいだし、その前にこんな状況で寝る気が起こるだろうか。
そのとき、薄れかけた闇の中から鳥の鳴き声が聞こえた。
"この辺りで凄い早朝に鳴くのはアカハラだ"と理科の教師に聞いたことがあった。
もう空が混沌とした青というか、藍色になりかけている。早朝なのかもしれない。
ずっとはずしていなかった腕時計を見た。
「・・・４時、か。徹夜だな」
こんなのは久しぶりだった。

カッカッカッカッという足音が聞こえてきた。
そこへ碧眼の少年が現れた。その白いマントが薄暗闇に映える。
「やぁ、リュウ。ロキというものだ」
容姿と喋り方が滑稽なくらいずれている。
「お前は・・・何者だ」
「説明すれば長くなる。用件だけを言おう。・・・我々とともに来い、ジモレンジャーよ」
「なんだって！」
リュウはポケットの中の真紅の石に手を伸ばした。
「なぜ警戒する。我々とともに来るならば、なんの危害も加えたりはしない」
「信用できるか！俺達は何度も意味分からないやつらに襲われた、あんたが味方だという保障はない」

「・・・我々はdarknessという、君らを襲ったのは反乱分子RIGHTだよ」
「・・名前からしてお前らのほうが怪しいだろ」
「我々は闇から世界を統制する。君らの視界に写っている世界は、表層だけだ。その深層を見たくはないかね」
「・・どういうことだ」
「アメリカ政府の半分は我らの支配下にある。そして世界を事実上操るアメリカのＭ家は我々の手下だよ」
「Ｍ家だって？知らないな」
「その枝分かれで今までのアメリカ大統領の半数は占められている」
「まさか！」
「社会はいまだに"母系"という思考を取り入れないからこうなのだ」
ロキが笑った。普通の少年の普通の笑いに見えるが・・・
「では考えておきたまえ」
ロキは立ち去っていった。リュウは憮然としていた。

東の空から白が広がっている。そこへレイが歩いてきた。
「"明けない夜は無い"」
「・・あ、おはよう・・・・・」
「徹夜？」
「あぁうん、そう」
「ふ〜ん」
リュウは、今のことを言おうか、言わないか迷った。だがこれ以上レイを悩ませたくは無かった。
どんどんと赤い光が空を立ち込めようとしている。


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