「見てよ！家から何十通もメールが来てるの。帰らせてよ」

セイコが泣き喚いていた。今までシロキの看病をずっとやってきた"しっかりした"彼女のおもかげは全くない。みんなは唖然として声も出なかった。しかしレイは満身創痍でも、頭の中だけは冴えわたっているようだった。
「そんなの無理。"家が恋しい"なんてあなたらしくもない」
「こんな非常識な事態はごめんだわ。あなただって最初は反対してたじゃない」
「現実を見て」
レイがその言葉を口にしたとき、みんなはこれはセイコのセリフだ、と思った。常時セイコが口にする言葉だ、と。
「・・・ごめん」
コウが謝った瞬間、セイコがわっと泣き出した。そこへ朝の散歩に行っていたリュウが戻ってきた。
「いったい何が会ったんだ、まだ朝早いじゃん」

「・・・つまりコウが、そののんきな声で、"まぁこんな生活もいいかな"といった、と。それでセイコが怒った」
「うん」
コウが頷いたとき、"事情聴取"をしていたリュウは屈託ないやつだ、と思って半ばあきれた。
「シロキはどうにかしないと・・・」
そこへレイがやってきて言った。
「このままじゃ見殺しみたいなものじゃない？」
「どうするか」
リュウは頷いた。もうシロキとセイコ、レイはたたかえないだろう・・・。どうなるんだ。
「手詰まりだな。パスか・・・」
リュウはチェスをよくやる。相手は豪快なシロキだ。いつも自分が勝つ。それは、シロキが試合においての華やかさ、華麗さにこだわるからだ。シロキは勝機をわざわざ逸してでも大きく動く。
「・・手堅い一手が欲しい」
リュウは、勝機、せめて逆転のチャンスが欲しかった。それは、華麗な一手ではない。
ポーンを一つずつ地道に進めていくようなことでもいい。


カッカッカッカッ と乾いたおとが響く。ロキの足音、そして��2の足音。
「閣下、われわれはオーディン、そして０．ボイスを討つべきでしょう」
大の大人が少年に遠慮しつつ追いすがっている。少年は青い瞳と白い肌、白いマントが際立ち、ヨーロピアンのようである。
「黙ってくれ。０．ボイスは確かに討つべきだ。だがアレがある」
「・・御意」
「そして戦闘部隊04-666、つまりジモレンジャー、そしてＡ級注意人物、ゴールデンナイトがいる」
「そうですが・・・」
「ジモレンジャーを０．ボイスらはねらっている、なぜか。それも知りたい」
「・・はい」
「君は山ヶ原として校内を探せ。アレをな」
ロキの目が異様に光り、��2はゾクッとして立ちすくんだ。そのあいだにロキは歩き去っていった・・・


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