「もう夏休みの前の一週間だねー」
コウの声を聞いてリュウは目をつぶった。ため息がつきたい。朝日を浴びてすっきりした後だというのに・・・。
「・・・本当だったら、だ。それにしても家族にあってないな・・・」
「仕方ないじゃん」
「そうだけど、さ」
リュウはそんなに楽天的、というか何も考えないことは出来なかった。なにげなく赤く染まる空を見上げてため息をつく。
「死にたくない、な」
ふと呟く。その時カッカッカッカッという足音が響いた。

白いマントがたなびき、口紅を塗りたくったように赤い唇がひらいた。
「この前の用件の回答をくれ」
「・・・俺は、拒否する」
「そうか、来て欲しかった。が、君が拒否しなかったら・・それはそれで失望しただろう」
「これは俺の意思だ、ほかのみんなのことは、知らない」
「いいえ」
レイが歩いてきて言った。
「あのとき、私は偶然聞いていたの。セイコとレイナと私はロキとやらの言葉は聞かない」
「ほぅ、さすがだな」
ロキが子どものようにあけすけに笑った。そして言った。
「��3、��4、頼むぞ。金色のやつも釣れよ」
「��4までいるの？」
セイコが呟いたとき、右から女の声がした。
「安心なさい、��4までしかいないわ、そして��1は首から下がない。��2は用事よ。私達が相手」

��4の妖艶な姿に見とれるコウの頭をリュウはこつんと叩いて言った。
「鼻血出すなよ、つうか後ろの方々ににらまれるぞ」
「へ？」
コウが振り向くと、ずんずんレイが進んできた。
「Ａ作戦ね」
「あぁ」
リュウはコウを引っ張って洞窟の中に入った。するとロキが笑い出して言った。
「袋のねずみではないか」
しかし笑い終わる前に、ロキの胸には矢が突き立っていた。
「・・・なんと、な。��3、やれ」
ロキの顔が歪んだ。彼は矢を軽く引き抜いた。血が噴出してきた。

��3が現れた。やはり巨大だった。
��4が笑って見ている。��3と戦って今まで助かった人間はいない。RIGHTの装備を持っていても助からない。ただ一人、ゴールデンナイトだけが正面から戦った。ほかの者は逃げるか、殺されるか。

ずんずん進む��3に洞窟の中から矢が放たれる。突き刺さった。
「効かないぞ、そんな棒では」
��3は少しも揺るがずに進む。とうとう洞窟の入り口までたどり着いた。と、そのときだった。
「ウゴッ！・・・あぁ、この・・野郎」
��3の背中から竹の槍が飛び出ている。串刺しである。さらに槍が両手を貫いた。
「折れ、折れるだろう！」
ロキが慌てて言い、近寄ろうとしたその瞬間、��3の首が吹き飛んだ。その怒りの形相をとどめたまま。体がロキの上に覆いかぶさるように倒れた。鮮血がほとばしった。あぜんとしているロキのマントが真っ赤に染まっていく。

「金色のやつも釣れたぜ。この通りここにいる」
青年が岩に座ってくつろいでいる。まさか彼が投げた剣が怪物の首を斬ったとは思えぬ。
「貴様ー！殺してやる！」
ロキの右手が黒く光った。剣が現れる。だがロキはその手を止めた。
「あなた、そんなことをなさって何になるの。憤怒や屈辱は似合いませんわ」
キッとロキの目が端整な美女の顔をにらむ。
「��4・・・、命令するのか」
「いえ、閣下」
「・・・・・・そうか。また、今度だな、下級兵Ｂ隊、時間を稼げ」
どこかからゲルゲルゲルゲルという声が聞こえてきた。次々黒装束の者たちが現れる。
「おい、待てよ！ハジメをさらったのはあんた達だろ！」
リュウの叫びは空しくこだます。周りから黒づくめのもの達が踊りかかってくるうちに、ロキは去っていった。


次へ