序章　現れる闇

「それでは授業を始める」
教壇に立った男、ゲンが言った。
「今日は代入の復習だよ。この前やった」
「またやるの？もういいじゃん、ゲン」
リュウは思わず言ってしまった。
「いや、授業だ。ほらノート出せ、リュウ」
「ふぁーい」
仕方なく落書きで汚い机の中からノートを引っ張り出し、ゲンが黒板に書いていく文字を写していった。・・・けれど眠くて頭に入ってこない。あ〜、ゲンの授業はつまらない、みんなそう思っていた。まえの数学の教師、ライトーさんの授業ののほうが何倍面白かったか・・・。ライトーさんはユニコーンを探しに北極旅行に行ったらしい。
リュウがなんとなくノートのはじっこにユニコーンの落書きを始めた。と、ちょうどそのときだった。突然ガタンという音がして、教室のドアが吹っ飛んだ！
「なんだ！」
ゲンが叫んだ。そのときゲルゲルゲルゲルゲルゲルという声がした。そして全身黒づくめの男が飛び込んできて、ハジメの手をつかみ、飛び出て行った。一瞬だった。
一瞬でハジメがさらわれた。

「いったいなんだって言うんだ！！」
太っちょのシロキが怒鳴った。するとゲンが叫んだ。
「うるさい！逃げるぞ」
「いや追うしかないだろう、こりゃ」
シロキがふっと笑って呟き、席を蹴飛ばしてあの黒づくめの男が出て行ったほうに走り出した。リュウも立ち上がった。そして走り出した。
「おい、シロキとリュウ。何考えてる！危ないだろうが」
ゲンに怒鳴られた。けどかまうものか！ハジメの命がかかっているかもしれないのだ、というかそれより好奇心が足を走らせた。
そのとき後ろのほうでセイコの呟きが聞こえた。
「こんな間昼間に誘拐なんて・・・」


「おいシロキ、どうするつもりだ」
「リュウ、俺に聞くな、俺に」
「じゃ追いついたら殴りかかるか？」
「ＯＫ」
シロキはあっさり答えた。と、リュウはその時後ろからゲルゲルゲルゲルという声がした気がした。
「まさ・・・か！」
リュウは振り向こうとして、息が止まるかと思うほどの衝撃で吹き飛び、ガツンと頭を壁にぶつけた。
「・・お〜い、大丈夫？」
コウの呑気そうな声が聞こえ、セイコやレイらクラスのみんながやってきた。
「ねぇどうするつもりなの？こんなことして」
セイコのかろうじて怒りを押さえ込んだ鋭い声が飛んできた。
「ハジメがどうなってもいいのか！」
シロキの反論が聞こえた。俺は必死で立ち上がった。体中がギシギシして痛かった。
セイコとシロキが口論をしているのがうるさかった。

レイが冷静に言い放った。
「まずいよ。囲まれた」
「にげないとーーー」
コウが叫んだ。もう間に間会わないと俺は思った。
どうするか・・・・・

ゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルゲルという声が思考の邪魔をする。どうすればいい！
その時突然、黄金の光がきらめき、頭の中に声が響いた。

「我は天の意思なり。 汝等に玉を与えん。 開け放て。 闇を斬る力が降らん。 然れども力は又善き事のみに非ざるを忘れる莫れ」

「・・・なん・・だ」
俺は手のひらの中の宝石のように光る石を見た。とても怪しい光のようにみえる。
心のどこかから強く『開け放て』という声がする。反響しているように何万回とその声が繰り返した。
その時恐怖が吹っ切れた。
その石の割れ目を開けた。
「行くぞ！」 ・・・・無我夢中で戦った。怪人たちが各所に倒れていた。そしてなぜか水や泡となって風に吹かれて消えていく。
「勝った・・・のか？」
呟くと、セイコが頷いた。
「私たちが戦って、勝ったのよ」
四人の戦士が立っていた。

その時、ただ一人変身していないレイが叫んだ。その手には黒い石が握られていた。
「あんたたち、勝ったとかいっているけど、何をしたか分かっているの」
その目が五人をキッと睨み、立ち去った。
「おい、どこ行くんだよ」
白いマントのシロキの言葉は宙に消えた。
レイの足早に過ぎていく姿はどんどん小さくなっていった。

「ここにいるのは俺と・・・」
白いマントをはためかせて、自分に指を差し、周りを見た。
「白いマントのシロキ、青いマントのセイコ、 黄色いマントののコウ 、それと・・・」
視線がさまよった。
五人のはずだ。
その時レイナがいきなりレッドの前に現れた。
「わっ！・・・」
「私、透明になってたのよ」
レイナがぼそりと呟いた。
シロキがいった。
「本当の透明人間じゃん！」


今彼らはぐちゃぐちゃになった教室へ戻り、整理をしていた。
しかしそんなことはどうでも良かった。
「つまりさ、俺らは正義の味方なんだよな！」
シロキが言った。
「自森を守るんだよな！」
「・・・ジモレンジャー、ね。自森を守るのなら」
セイコの一言が興奮していたシロキに火をつけた。
「これからは俺たちはジモレンジャーだ！イェーイ、ジモレンジャー！」
ほかの五人は呆れてそれを見ていた。
その時、コウが言った。
「ね、あ、あのハジメはどうすんの」
ハッとして五人は顔を上げた。

「俺は行くぞ！」
シロキがばっと立ち上がって怒鳴った。
だがセイコの声に止められた。
「どこへ？」
シロキは絶句した。二の句が継げない。
どうすればいいのか？まるで分からなかった。


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