「『事態はさらに深刻化している。
またもやＪ１−１のクラスの三名の生徒が失踪した。急ぎ行動を起こさねばならない』か・・・・ね。う〜ん・・・・・」

校長、九落雄(クラク　ユウ)は悠然とコーヒーをすすりながら英語課の教師、山ヶ原の作った報告書を読んでいた。
「どうしたものかな。この事態は、さ」
「・・校長、慎重にお願いしますよ」
校長室が静まりかえる。
その時、カチャンとカップが床で割れる音が響いた。

「・・このコーヒーは不味いな、あまりにも」
「話をそらさないでくださいよ」
「分かってる、次は��3を使うよ」
「あの男はばかだ・・・後始末はどうします、屍や血が残っては困ります。警察が来たら厄介でしょう」
「いいだろう、構うものか。刃向かうやつらが悪いのだ。後始末は君に任せる。どうとでもしてくれ」
校長は口を閉じた。
その青い瞳が山ヶ原を直視した。
まるで深い海中のような青だ。

「警察の接待は我等がスポンサーがどうとでもしてくれる。ターゲットは確保したから、な。少年だよ」
「はい、本部の意思はどうです」
「DARKNESSにたてつく者は処分。とくにLIGHTは抹殺」
窓の外から元気なかけ声がしてきた。野球でもしているのだろう。
校長は立ち上がり、その青い瞳を光らせて外を見ていた。
山ヶ原も立ち上がった。そして呟いた。
「敵は子どもだろうに」

そのころ、『行方不明者』リュウは学校のすぐ近くの森で木刀を振っていた。ブンブンという空気を切る音が森中に反響している。
「おーい、リョウ。なんでやってるんだよ」
コウが歩いてきて聞いた。
「関係ないだろ」
「い、いやだってさ、・・なんとなく」
リュウはふぅと息をつくと木刀を置き、大きな苔だらけの岩に座り込んだ。

「一応剣道部だし、な」
「へぇそうなの」
「そうだよ、気がつかなかったのか。毎日行っているのに」
「う、うん、早く帰るし」
「そうだよな。シロキも早く帰るし、けど帰って何するんだ」
「・・・いや、何も」
会話が途切れた。
リュウは立ち上がり、また素振りを始めた。
今ごろ学校でレイはどうしているかな、と考えながら・・・

昼下がりの休み時間。
「こんにちは」
大きくて鋭い声にびくっとしてレイはドアを見た。
いきなりドアを開けて大男が入ってくる。
長いひげ、太い腕、そして血のように赤い瞳、二メートル近い身長。
恐ろしい威圧感。
否、恐怖感。
普通の挨拶の中に何か異常なものが包まれていた。

「赤尾田という。よろしく そして・・・」
大男の体が膨れ上がり、服が破れて中から熊のような、それでいて獰猛なこの世のものならざる生物が現れた。
「・・・お別れだ！」
教室の中に今いるのはレイ、シロキ、レイナと、その怪物だけ。
「おいおい、ホラーか、ＳＦか、なんだよ」
シロキがにらみつけた。
「現実」
レイは呟くと黒い石を取り出した。しかし、昨日リュウに向かって言った自分の言葉を思い出した。
『六人が力をあわせないと勝てない』

「逃げて」
レイは高い怪物を見上げるシロキに怒鳴った。
しかしシロキは何にもひるまないやつだった。悪く言えば傲慢不遜なのだ。誰かの言葉に耳を貸すわけが無い。
シロキの体を白い渦が取り巻き、白い戦士が表れた。
「うるさいぞ、レイ。逃げたいなら行けばいい。俺はジモレンジャーだ！」
レイはスッと体の向きを変えてレイナに向くと呟き、変身し必死に言った。
「レイナ、変身して逃げて！リュウのところへ」
レイナはおとなしく頷いた。

レイは壁を後ろにしてするするとにらみ合う怪人とホワイトに近づいていった。
その時、ガッと鈍い音ともにシロキの胸がえぐられた。
白いブラスト-プレイト(胸の装甲)の下から真っ赤な血が噴出してきた。
シロキは必死に手で押さえようとするが、どうしようもなかった。膝を突いて倒れこむ。
「死ね、脆き者」
「くそったれ！あ、がぁ。このー・・・・」
またもや爪が空気を切って迫った。
次を浴びれば間違いなく即死だ。
シロキは目を瞑った。


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