「なぜ撤退だ！��2」
赤尾田は校庭にたたずむ山ヶ原に食って掛かった。しかし山ヶ原は平然として答えた。
「本部からの指示だ。ロキ閣下を通さないで、な」
「・・・何があったんだ」
「スポンサーの圧力だろう」
「０.ボイスか」
「ああ、この前のターゲットが失敗作だったらしい」
「情勢は・・・」
「本部はスポンサーの意のままだ。ロキ閣下は抵抗している」
「ああ、分かってる！」

「スポンサーはもう五人ほど実験体が欲しいらしい。ロキ閣下は命令を無視した」
「どうする、お前は」
「・・・本部のオーディンをかつての違反者のごとくにする」
「『力の神』のことか、懐かしいぞ。あの時ほど血に酔えたことはない」
「では��1に会うとしよう。その間あの子どもらは放っておく」
「楽しかったぞ」
山ヶ原は興味なさそうに頭を振ると歩き出した。


沈々とした夜だった。まるで季節が全く逆になったかのように・・・
消えかけた月がほっそりと残っている。
洞窟の中は陰気になっていた。ただコウの鼻歌が場違いに明るく響いているが・・・
「こんな事になるなんて・・・」
セイコが泣きじゃくっていた。やはり辛いのだ。
「ジモレンジャーも総崩れ、ね」
レイが冷静に呟いた。
リュウは頭を抱えて黙り込んでいた。だがいきなり顔をあげると怒鳴った。
「コウ、鼻歌はもういい！」
コウがびくっとして鼻歌をやめるとまたリュウは頭を抱えて黙り込んだ。

シロキは素人目に見てもほとんど再起不能だと一目で分かった。昼からずっと意識が無い。
生死のはざまを彷徨っているのだ。
かといって病院へもいけない。
学校にいきなり侵入してくる連中がどうして病院に来ないといえるのか。
このままでは駄目だと分かっていてもどうしようもない。

いきなりリュウはバッと立ち上がった。
「戦って、戦って、戦って・・・どうするんだ！もともと何のために戦ってるんだ」
「静かにしてくれない」
セイコーが凛とした声をあげた。細い月光がスッと差す。
「私達は・・・勝たないといけないのよ」
リュウは"何に勝つんだ"と心の中で呟いた。しかしこれ以上セイコを泣かせる訳にはいかなかった。


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