「・・謀られた」
オーディンが呟いた。その時いきなり幼い少年のようなロキのホログラムが室内に浮かんだ。
「閣下、０．ボイスの動向は？」
「・・・計画が狂った。やつは、あのジモリの何処かに不老不死の薬を保管しているらしい」
ロキのまぶたがぱちぱちした、十回ほど。
「・・急いでロウ大佐を行かせた。色々な口実でな、だが不安だ」
「失われたアレが、在ったのですか・・・」
ロキは明らかに呆然としていた。その焦点は合わさっていない。
「０．ボイスの策略だ。嘘かも知れん、がRIGHTは大部隊を展開した」
「０．ボイスは何を・・・。だって誰にも知られずにアレが飲めるなら、それにこしたことは無い。アレは災いの元だ」
「・・・やつらはニホンのジモリを台風の目にしたいらしい」

バーン！！

洞窟に爆音が響いた。リュウは点した蝋燭をむけた。
そこには普通のサラリーマンが立っていた。朝と夕に電車に乗っていそうな。
「誰だ」
返答は無い。サラリーマンの男が光りだした。まばゆい太陽のような光だった。月光も眩んでいる。男が炎に包まれ、そこには異形のトカゲの頭をした男が立っていた。
「・・・敵か」
リュウは呟くとすぐさま洞窟を走り出て、変身した。
赤い戦士が、動転した世界から生まれた。

「あいつは・・・。すぐ戦いたがる・・・」
レイが響く声で呟いた。その時、レッドがスッと後ろを向くとはっきりと言った。
「戦わないでどうする、みすみす死んでたまるか」
その声はまるで悲劇の武将のような悲壮さを持っていた。しかしそれがよくある、"なんとかレンジャー"みたいな仮面から発せられるのは少し滑稽でもあった。
その時トカゲ男が跳びかかってきた。
レッドはその馬鹿でかい頭にパンチを送り込んだ。
「キェーー！」
「うるさいんだよー！」
トカゲ男が後ろに吹き飛んだ。だがその時ボーという音ともに、口から火があふれてレッドを襲った。
「・・・サラマンドラ」
レイが呟いた。と、同時にレッドが火達磨になって転がった。
「なんでのんびりしてるの！」
セイコが怒鳴って洞窟を走り出た。コウとレイナも従った。

「・・・うっ、負けてたまるるか」
レッドが燃えたまま立ち上がった。ゴーゴーという音ともに紅蓮の炎がレッドの体から上がる。
そしてシュッと炎が四散したとき、そこには黄金の戦士が立っていた。少しでも動くたびに、キラリとわずかな月光をはねかえした。
「サラマンドラ、消えろ」
呟きともとれるほどの小声。しかし、そこには石のような冷たさがこもっている。
「キェーー！」
黄金の戦士は転がっていた木の枝を手に取った。すると一瞬でいかずちの輝きを放ち、装飾過多な剣となった。
ジャラジャラ、ダイヤモンドとルビーがぶつかり合った。
スッと剣が空間を走った。あとを引くように白い光が輝く。
次の瞬間、あのとかげ男がいきなり爆発した。一瞬だけカッと辺りを照らして・・・


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第三章　満ちる時